関節リウマチの治療

以前、リウマチの診断について書きました。診断がついたら、次は治療ですね。
・治療の流れ 内服薬から注射へ
・治療の効果はどのようにみていくのか?
・血液検査は何をみているのか?「リウマチの数値」とは?
・治療の目標とは?
それぞれ、書いていきます。

関節リウマチの治療は、内服薬と注射薬の組み合わせで行います。最も標準的な流れは、まずメトトレキサート(methotrexate:MTX)の内服を開始し、効果が不十分であれば注射薬(=生物学的製剤、BIO(バイオ)製剤)を追加することです。ちょっとややこしくなりますが、内服薬だけれども注射の生物学的製剤と同等の効果が示されているJAK(ジャック)阻害薬というお薬もあります。生物学的製材は先発の製剤だけで8種類、JAK阻害薬は4種類あります(2020年10月現在)。

ヨーロッパの学会(欧州リウマチ学会:EULAR)から出されている「治療の推奨(recommendation)」の一番最近の2019年版では生物学的製剤とJAK阻害薬は治療の流れのなかで同じ位置づけになりました。
どういうことか。ごく簡単にまとめますと、

とように、段階を踏んで治療を強めていくことが推奨されています。それぞれのステップの治療を3カ月行っても改善がみられない場合や、改善はあっても半年間で治療の目標に達しない場合は次のステップに進むことが勧められています。言い換えると同じ治療を3カ月やっていて、改善傾向が見られていればさらに数カ月同じ治療を続けてもう少し良くなるのを待ってもいい、一方で3カ月で全く効かないならその治療は見直したほうがいいよ、ということですね。

では、治療の効果はどのようにみていけばいいのでしょうか?
最も大事なことは
・自覚症状の改善
・関節所見の改善
この2つです。関節所見というのは、私たちリウマチを診る医者が視て・触って関節の腫れている程度が軽くなったか?腫れている関節の数が減ったか?ということから判断します。治療薬によって改善のペースは異なりますが、メトトレキサートの場合は新規に開始したり、増量した場合その効果が得られるのに3〜4週かかることが多いです。生物学的製剤やJAK阻害薬であればもっと早く改善が自覚できることもありますが、痛み止めのように飲んですぐ効くわけではなく最初の1〜2週は薬の効果が感じられないことも多いことは知っておいてください。

このように指で触れて、腫れの有無や程度をみます

関節の腫れの程度は、エコー(超音波)でみることもあります。腫れの程度(黒い部分の範囲)や、炎症の程度(赤い血流信号の範囲)が良くなったか、消えたか、残っているのかを評価します。全ての方で必要なわけではなく、当院では診察で判断が難しい場合などに行っています。

骨(白いライン)の上の黒い部分が腫れた部分(三角印)です

血液検査はなんのためにしているの?実は最も大事な役割は副作用チェックです。メトトレキサートを内服している場合は定期的に肝臓の数値が上がっていないか、血球(白血球や血小板)が減っていないかという副作用のチェックのために採血をする必要があります。他のお薬の場合も、それぞれ薬剤ごとに注意してみていく項目があります。

ではリウマチの具合はどの数値でみるの?すなわち「リウマチの数値はどれですか?」というのはよく頂くご質問です。関節に炎症があると上昇する炎症反応=CRP・MMP-3という数値を参考にはするのですが、実はあまり厳密な指標ではありません。例えば、リウマチの病状が悪くないのに高くでることもあります。
・CRP・・・風邪、胃腸炎などいろいろなことで上昇する
・MMP-3・・・ステロイドの内服、腎機能の低下などでも上昇する
ということもありますし、はっきりした要因がなくても勝手に上下してしまうことも多いです。一方、手指の関節のような小さな関節の場合は腫れていてもCRPやMMP-3は上昇しないことがよくあります。血液検査は色々な理由で実際のリウマチの状態を反映しないことがあるため、参考程度だと考えてください。少なくとも「CRPを下げないといけない」ということはないですし、それが目的では全くありません。逆に血液検査が問題ないからといって、リウマチが治まっているとはいえないこともあるわけです。

治療の目標
最初に書きましたように、ヨーロッパの学会の推奨では半年で治療目標に達せなければ治療を見直すのでした。この「治療の目標」とは何か?ということですが、これは患者さんごとに異なります。理想的には「寛解」という状態を目指します。寛解とは病気の勢いが完全に治まっていることで、リウマチであれば関節の腫れが全くなくなることを指します(これは「臨床的寛解」と呼ばれます)。しかしながらリウマチの治療は強すぎれば感染症を始めとした副作用のリスクが上がります。高齢の方、肺の病気を合併している方などではしばしば「完璧を目指しすぎない」ことも必要になります。例えば「腫れは残っているが、生活上大きく支障にならない程度」を目標にすることもあります。どこを目指すかは、担当医と患者さんとで相談して決めていきます。
また長期的な目標は「関節を壊さないこと」です。関節に腫れ=炎症がずっと続いていると、骨に傷がついてしまい年単位ではそれが関節の破壊・変形につながってしまいます。骨の傷が広がっていないかを調べるためには、定期的にレントゲンを撮る必要があります。通常は半年〜1年ごとくらい。炎症によって軟骨がすり減ると関節の隙間が狭くなり(「関節裂隙狭小化」といいます)、骨が傷つくと「骨びらん」として形の異常がレントゲンでわかることがあります。寛解して完全に関節の炎症がなくなっていれば、このような「狭小化」や「骨びらん」は進行しなくなります。これを「画像的寛解」と呼びます。

左は正常。右は骨と骨の間が狭くなり、骨の色も炎症のために薄く(黒く)なっています。
左は正常。右では骨の頭が欠けてしまっています。

今回は、わかりやすくするためにメトトレキサートから生物学的製剤・JAK阻害薬の流れだけをお示しし、治療効果のみかたや治療の目標について書きました。実際はメトトレキサートが使えない方はどうするか、生物学的製剤が使えない方はどうするかなど様々な治療の仕方があります。またリウマチの内服薬は実にたくさんの種類があり、メトトレキサート以外の治療薬はどういうときに使われるのかなども日を改めて書きます。ここまで読んでいただいた方、ありがとうございました!

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