関節リウマチの発症のしかた 診断が難しい場合とは?

関節リウマチの発症のしかたにはいろいろなパターンがあり、ときに診断がすごく難しくなる場合があります。

多くの方はある日突然リウマチになるわけではなく、数週間〜数ヶ月の経過でだんだん病状がはっきりしてくることが多いです。ですので診断をする側の立場からは、時間が経ってからの方が診断はしやすく、逆に症状がでてから日が浅いと診断がつけづらいということがあります。


典型的な例(架空の患者さん)を提示します。
・3カ月前くらいから右の中指を曲げ伸ばすと痛い。だんだん腫れてきた気がする。
・先月から左の人差し指と両手首も同じように痛い。
・膝、肩も痛くなってきて受診。
→ 診察すると、両手首と右の第3PIP、左第2PIP関節が明らかに腫れている(写真の黄色丸印 私の手なので、実際は腫れていません)。


血液検査でリウマトイド因子(RF)と抗CCP抗体が陽性であり、関節リウマチの診断が確定した。

こういう場合は、診断について悩むことはほぼありません(「関節リウマチの診断」の表の①にあたります)。「誰がみてもリウマチだ」という状態です。でも、3カ月前の中指が痛くなったばかりの時点で病院を受診したら「腫れている」とわからずに診断できない可能性があります。


前回「関節リウマチの診断」(の表の③)で述べた一番難しいパターン、抗CCP抗体が陽性だけれど関節炎がみつからないという状況なるのがこのような「受診のタイミングが早すぎて異常がわからない」場合です。この場合は「時間が経って関節炎がはっきりしてくるのを待つ」というのがはっきりした診断をつけるのに良い方法です。そのためにリウマチをみる医者は「様子をみましょう」「経過をみましょう」と言うことがあります。

これは「時間が経ってより正確な判断ができるようになるのを待つ」という目的のためです。また、もしかすると痛みは病気のためではなくて自然によくなってしまうかもしれません。「様子をみる」「関節が腫れているかどうか確かめる」ことをせずに「リウマチの血液検査がでているから」ということだけで「診断」「治療開始」としてしまうとひょっとしたら不要な薬を飲むことになってしまうかもしれません。

もうひとつの診断が難しい状況は、関節の腫れがあるけれど持続しない場合です。関節リウマチの確定診断には「関節の腫れがある」ことが必要条件なのですが、より厳密には「同じ場所に持続的に腫れがある=持続的関節炎」であることが必要です。これに対して「一過性関節炎」というのは2-3日間関節が腫れるけれど、自然にひいてしまうような場合をいいます。

一過性関節炎がいろいろな関節に月に数回起こる。これを「回帰性リウマチ」といいます(Nature Review Rheumatology 2019;11:687 参照)。受診した時にはもうひいていて、腫れているのがわからない。リウマチの血液検査(RF/抗CCP抗体)は陽性(陰性のこともありますが)。この場合も「抗CCP抗体が陽性だけれど関節炎がみつからない」という難しい状況になります。


「回帰性リウマチ」は時間が経つと同じ関節が腫れた状態が続くようになり「普通のリウマチ」になって診断が確定する、つまり「誰がみてもリウマチだ」という状態になる場合と「ずっと回帰性リウマチのまま」という場合とがあります。前者の場合は「関節リウマチの”超”早期段階」ということになります。


「回帰性リウマチ」の状態であれば通常、骨に異常は来さないと言われています。それでもあまり頻繁に腫れて生活に支障がある場合などはリウマチのお薬を始めることも考えますが、「持続的関節炎」にならなければ絶対的に治療が必要、というわけではありません。やはり「様子をみて」から治療が必要かどうか判断する場合もあります。

「早期診断」は理想である一方、「過剰な治療」につながる危険性があります。リウマチは週単位で取り返しがつかなくなるような病気ではないので、「様子をみる」ことで正確な診断を優先した方がよい場合もあります。

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