なぜステロイドは急に止めてはいけないのか

「ステロイドはいったん飲み始めたら、勝手に減らしたりやめたりしてはいけません。」ステロイド(薬剤名としては、プレドニン・プレドニゾロン・メドロールなど)を始めるときに必ず説明されることですが、その理由をご存知でしょうか?

ステロイドにもいろいろありますが、一般的に我々膠原病内科医がステロイドと言った場合は「副腎皮質ステロイドホルモン」を指します。名前の通りで腎臓の隣にある「副腎」という小さな臓器から作られているホルモンなんですね。自然に体が作っている量は、最もよく処方薬として使われるプレドニンに置き換えるとだいたい2-2.5mgくらいといわれています。これを「生理的な分泌量」といいます。

「生理的な分泌量」を超える量をずっと飲んでいると、外からホルモン剤が補充されていることになるわけですから体はホルモンを作るのを休んでしまいます。

例えば仕事をしなくても1日に5万円もらえるとしたらどうしますか?たぶんお仕事を辞めてしまうと思います。少なくとも私なら辞めます。しかし、1日にもらえるお金が2万円、1万円、、、と減ってきたら、また働かなきゃと思うはずです。仕事を再開した後なら、もらえるお金がゼロになっても大丈夫ですね。

でも1日5万円もらって仕事していない状態で、急にもらえるお金がゼロになったら大変です。これが、ステロイドを急にやめてはいけない理由です。

副腎がステロイド作りを休んでいる状態で急にステロイドの内服を止めると、体はすぐにホルモン作りを再開できないのでホルモン不足になってしまいます。これを「副腎不全」といいますが、発熱・倦怠感・食欲不振・関節痛など実に様々な症状がでます。ゆっくりと薬として飲むステロイドの量を減らしていけば、また体はホルモンを作ってくれるようになります。

ただしホルモンを作る仕事を何年も休んでいると副腎が萎縮してしまい、再びホルモンを作ることができなくなってしまうことがあります。これを「続発性副腎不全」といいます。こうなると、ステロイドの内服を一生続けないといけないことになってしまいます。病気を抑えるのに不要でも、ホルモンの補充のために止められないのです。

実は、どのくらいの量でどのくらいの期間ならこの「続発性副腎不全」にならずにすむのかははっきりとはわかっていません。私は最初に大量(プレドニンで50-60mgという量)のステロイドを必要とした方でも、できるだけ早く(通常1-2年くらい)「生理的な分泌量(プレドニンで 2-2.5mgくらい)」まで減量することを目標としていますが、そうすると「続発性副腎不全」は防げることが多いです。

逆に「プレドニン 5mg」であっても 2-3年間継続していると、「病気が良くなってもステロイドがやめられない状態」になってしまう可能性があるということです。小さな錠剤1粒ですが、医者としては気軽に処方してはいけない薬だと思っています。

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