抗核抗体が陽性!=膠原病の疑い??

「抗核抗体が陽性です。膠原病の可能性があります。」と言われたら、、、とても不安になりますよね。最初に申し上げておきます。膠原病科に紹介になる第一の理由が「抗核抗体陽性」である場合、膠原病の可能性はまずありません。

なぜなら、抗核抗体は健常者でも20人に1人くらいは陽性になってしまう検査だからです(Arch Pathol Lab Med 2000;124:71. pubmed ID 10629135参照、160倍以上は5%、320倍以上は3%で陽性)。ですので、抗核抗体が陽性になる病気を具体的に疑った上で陽性になった場合は意義がありますが、そうでなければ「関係のないことで測ったらたまたま陽性になった」ということです。

Choosing wisely (賢く選択する)というカナダのプロジェクトがあります。医療費削減のために、様々な検査の「費用対効果」を調べているのですが、その中に抗核抗体も含まれています(Autoimmunity Reviews 2016;15:272. pubmed ID 26687321)。これによると、抗核抗体陽性であるために二次検査として様々な検査(主に全身性エリテマトーデスの可能性を考えて)を追加で行うことになり、そのコストは350カナダドルに昇るのだそうです。しかし健常人でもしばしば陽性になる検査なので、ただこの検査が陽性だというだけでいろいろ調べても、上記のような膠原病がみつかる可能性は極めて低いです。よってこの論文の中では、「特定の膠原病を強く疑う所見がなければ、測定しないこと(do not order)」が勧められています。

「特定の膠原病」とは、主に「全身性エリテマトーデス(SLE)」「混合性結合組織病」「強皮症」の3つです。事前にこれらの病気を疑われて検査したのでなければ、まず心配ないでしょう。ちなみに膠原病内科医からみて抗核抗体の「陽性」が診断に与えるインパクトはほとんどありません。ほかにもっと病気を強く示唆する所見がないと確信できないからです。逆に「陰性」だった場合は「SLEを疑っていたが否定的になった・・・」という意味で大きなインパクトがあります。

当院にも頭痛、腹痛、関節痛、、、といったまず関連のないような症状で測定された抗核抗体陽性で紹介になる方が多くいらっしゃいます。相当、心配されて来られる方もいらっしゃって、問題ないことをお伝えするとほーっと安堵のため息をつかれる方も多く、涙ぐんでしまうこともあるくらいです。受診の費用、検査の費用、といった問題もありますが、「膠原病の検査が陽性」という不安を抱えて受診予約まで何週間も過ごすというストレスを与えてしまうことが、最も問題だと思います。

もし膠原病科にご紹介になった場合は、あまり心配せずに受診してくださいね。

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