関節リウマチの診断

関節リウマチは、200人に1人という「ありふれた病気」ではあるのですが、診断も治療も非常に専門的になっています。今回は、非常に重要な「関節リウマチの診断」について書きます。「専門医なら簡単でしょ?」と思われるかもしれませんが、実はリウマチ専門医でも難しい場合があるのです。少なくとも、血液検査だけでシロクロがつくような単純なものではありません。

「診断の3本柱」は次の3つです。
・「関節の腫れ(=関節炎)」があるかどうか:診察して触ってみたり、エコーやMRIを使う場合もあります
・「リウマトイド因子(RF)」「抗CCP抗体」が陽性かどうか:採血でわかります
・他の病気で関節が腫れている可能性はないか:関節以外の症状や内臓の問題がないか、採血や採尿をして調べます


2010年に発表された「関節リウマチの分類基準」というものがありますが、これは上記の3本柱をまとめたものです。関節の腫れが1カ所以上あることがスタート地点になっていて、他の病気で腫れている可能性を除外した上で「腫れている関節の場所と数」「RF・抗CCP抗体が陽性かどうか」などを点数化して6点以上で関節リウマチと「分類」するという基準です。

この「分類基準」というのは薬の試験などを行う対象になる方を選ぶための基準であり、実際に病院で患者さんの「診断」を行う時にこの基準で決めているわけではありません。病気の診断を行う際には5点以下でもリウマチということは普通にあります。「腫れている関節の場所と数」「他の病気の可能性」を検討するのは同じですが、点数で単純に切り分けることはできないのです。

実際に診断を考える時、ここに書ききれない要素はたくさんあるのですがわかりやすくするために単純化してみます。「診断の3本柱」のうち上の二つ、すなわち関節の腫れがあるかどうかと抗CCP抗体が陽性か陰性かで4パターンにわけます。

いずれの場合も関節リウマチ以外に関節炎を起こす疾患としてSLE、血管炎、乾癬性関節炎などの可能性や、感染症・悪性腫瘍が背景にないかを検討・除外することと、関節炎の評価がきちんとできることが大前提です。

あれ?RFはどこへ行った?と思われるでしょうか。RFは20人に1人陽性になる検査なので、診断に与えるインパクトは大きくありません。このあたりも分類基準とは異なる点です。

①:関節炎があり、CCPが陽性→ 関節リウマチでほぼ確定します。
②:関節炎がみつからないが、CCPは陽性→ 実は一番難しいパターンです。
③:関節炎があるが、CCPは陰性→ 他の疾患がきちんと除外できていれば、「CCP抗体陰性の関節リウマチ」と診断します。
④:関節炎がなく、CCPが陰性→ 加齢による変形性関節症など、「炎症を起こす病気」ではない可能性を考えます。

①だとほぼ確定、④だとほぼ除外であまり悩まないわけです。②の場合も、他の疾患をきちんと除外していれば関節リウマチのお薬を始めることにまず問題はありません。例えば「乾癬性関節炎(皮膚疾患の乾癬に、関節炎を合併したもの)」だった場合にあとから皮膚の症状がでてきて「関節リウマチ」→ 「実は乾癬性関節炎だった」ということはあり得るのですがこういう場合も治療薬はほとんど共通なのです。

問題は③なのですが、長くなるので日を改めて書きたいと思います。

大事なことなので繰り返します。「他の疾患の除外」と「関節炎の評価」がきちんとできることが大前提です。この2点はかなり修練を要します。「血液検査が陽性だったから、リウマチですよ」「血液検査がでていないから、リウマチではないですよ」というような単純なものではないことは、ぜひ知っておいて頂ければ、と思います。


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